人はなぜ学ぶのか?
九州遊学を終えて帰ってきた寅次郎。そのとき叔父にこっぴどく叱られ家の外に追い出され、雨の中一人涙を流す文のもとに、その寅次郎がやってくる。人はなぜ本を読み、人はなぜ学ぶのか、そもそも本とは一体何か?独り言のように自身の過去の苦悩を文に話す寅次郎。そして、文にこんなことを聞く。
「文。人が怖いか?」
涙ながらにことのいきさつを話す文に、寅次郎はあるものを文に見せた。海防臆測。九州遊学で手に入れたものだという。「こんな面白い本を持っている男がいるなんて、長州にも骨のある男がおったもんじゃ」と禁書を手に呑気に笑っているのだった。
吉田松陰と小田村伊之助の出会い
「明日からは、九州遊学を終えた吉田寅次郎が教えることになる。が、その前に一つ、皆に聞きたいことがある。ご城下にこげな邪な本を読む人間がおる」と明倫館での講義が終わりに差し掛かった玉木文之進が話し始めた。
「この本を持っていたものがいたら名乗り出てほしい」と言うと、寅次郎が周囲の緊張の中で立ち上がる。孫子の兵法や恩師であった山鹿素行先生の言葉を引用しつつ、最終的にこんな質問を文之進に投げかけた。
「明倫館ではなぜ敵となるかもしれん異国のことを学ばせようとしないのです」 そして文之進の手に合った海防臆測を破り捨て、自ら持つもう一冊を取り出した。
「むだです。どこにでもあります。なぜ人間は禁止された本を読みたがるのか?知りたいからです。学びたいからです。」
「皆に問いたい。人はなぜ学ぶのか?」
こんな一人演説を始めた寅次郎を、文に連れられてやってきた小田村伊之助は彼を見つめていた。寅次郎曰く、人が学ぶのは職を得るためでも、知識を得るためでも出世するためでもない。教えるためでも、尊敬のためでもない。己を磨くために、学ぶのだと。
それを聞いた伊之助、自分が所持していた本であったと自ら名乗り出る。ざわつく場をしり目に、彼は自分の考えを自分の口で述べ始めた。人が学ぶのは、この世の中で己がなすべきことがなんなのか、それを学ぶのです。私は日本国はもとより、長州をお守りするために学びたい。
長州藩種、毛利敬親
騒ぎを巻き起こし、禁書を所有し、そして禁書を持つ有用性を訴えた。一般的には、どう考えたって二人には処分が下るはずだった。しかし、突如現れた藩主の毛利敬親は「このたびの一見は不問とす」と述べ、再び江戸で学びたいという意思を表明した二人に、「そうせい」と述べられた。
一章の友となる小田村伊之助と吉田松陰は二人そろって江戸へ出立。「文、お前は人と人を出会わせる、不思議な力があるのかもしれんのう。」そんな寅次郎の言葉を思い出す文。ペリー来航の2年前の出来事であった。
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