流星ワゴン・原作の結末ネタバレ/健太とチュウさん、美代子のラスト

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流星ワゴン・原作小説のあらすじ」という記事で、流星ワゴンのあらすじ概要を書いてきましたが、こちらの記事では結末部分にフォーカスします。主人公の永田一雄をはじめ、父のチュウさん、橋本さんに健太くん、妻の美代子、息子の宏樹のそれぞれのラストと、あらすじ部分の結末がどうなるのか、解説していきます。

 

流星ワゴン・原作の結末ネタバレ

流星ワゴン (講談社文庫)

まず流星ワゴンの結末自体がどうなるのか?の部分から。あらすじではワゴンと過去を行ったりきたりしていて、最後の方は主人公の一雄が死ぬのか、死なないのかが気になる部分でしょう。

原作の結末では、永田一雄は死ぬことなく現実の世界に戻ります。その現実世界は、やり直した過去とは一切関係のない、もとのままの現実です。つまり、一雄にとって「死んでもいいかな」って思えたほどの厳しい現実の世界のままです。戻ってきたのは、ワゴンに乗る前の駅前のベンチ。手にはおにぎりとウィスキー、そして胸ポケットには「お車代」と書かれた封筒が入っています。

妻は朝帰りしているし、息子は受験に失敗して自宅に引きこもったまま、そして自宅も引っ越しはしていないあのマンションのままです。その厳しい現実の世界から、もう一度やり直し、「俺は元気でやっている」という最後の結末で物語は終了します。

 

チュウさんの結末

永田一雄の父であるチュウさんは、病院で死を待つのみの自分に戻り、まもなく死去します。一雄が現実世界に戻ってきた5日後のことでした。父の葬儀に息子と妻の美代子を連れて出席するため、羽田空港に向かうモノレールに乗るシーンがあります。父も、あのワゴンを降りたのでしょう。

 

健太くんと橋本さんの結末

流星ワゴンのあらすじを書いた記事では、息子の健太くんが成仏するために父のもとを離れたところだけ紹介しました。しかし、最後は結局成仏せず父の橋本さんと共にワゴンに戻ります。なぜ、作者は息子の健太くんを成仏させなかったのかは作者にしか分かりませんが、まぁ健太くんと橋本さんのあの親子が今でもあのワゴンに乗って、どんな後悔を持った人を乗せて、どこを走っているんだろうと色々想像をふくらませる感じで終わらせたのかな、と思います。

大抵の場合、成仏させてハッピーエンドで終わりというのが王道的な結末だと思いますが、こんな終わり方もありなんだな、と流星ワゴンを読んでみて個人的に思いました。

 

美代子と宏樹、そして一雄の結末

息子の宏樹は相変わらず部屋にこもったままで昼夜逆転の生活をしていましたが、自宅に戻った父の一雄が部屋を大掃除し、溜まりに溜まったゴミを処分し、洗濯物も片付ける。そんなときに、ふと父の前に現れ、健太くんが残したプレゼント、黒ひげ危機一発を父にせがまれて遊びます。

翌朝、妻を駅まで迎えに行き、妻はそれ以降外泊をしなくなります。宏樹も、昼夜逆転の生活が治り、一雄は再就職に向けた就職活動に精を出します。まだまだ先は長くとも、ここから家族はやり直しを目指して懸命に生きていく、というところで物語は終了です。

 

流星ワゴンが問いかける、父という存在

流星ワゴンの原作の巻末に、物語の解説が掲載されています。そこには、フランスの社会学者の言葉を引用し、次のような記述があります。

 

家庭の中で居場所を失った父親は、(A)愛情ある父親を威厳を保とうとして権威をふりかざすか、(B)愛情ある父親を演じようとして子どもたちの機嫌をとるか、極端に言えば二つしかなくなる。

(中略)

権威主義の家父長と、よそよそしい母親とに苦しんだ子どもは、「並外れて愛情深い」父親になる。ところが今度は、このやさしい父親の子どもたちは彼を厳しく裁く。父親が妻の尻に完全に敷かれているように見えるからである。

流星ワゴン (講談社文庫)・P473解説より引用

 

確かにこの記述にある通り、家庭における父親とはこの2つに1つなのかもしれません。権威主義で威圧的な父か、愛情あふれる頼りない父か。これから父になる人間にしてみれば、どっちも嫌だなぁというのが、率直な感想でしょうか。こんな視点を織り交ぜながら流星ワゴンを見ると、また違った見え方がするかもしれませんね。

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