朝ドラ、あさが来たが絶好調です。毎朝毎朝、あさちゃんを楽しみにしておられる方も多いでしょう。
朝ドラのヒロイン、白岡あさのモデルになっているのが「広岡浅子」。朝ドラの原案は小説・土佐堀川です。これから広岡浅子は炭坑事業、銀行事業、女子大学設立、生命保険事業など多彩な分野で活躍していきますが、原作でも史実でも、これからの浅子には色々な困難が待ち受けています。
朝ドラ・あさが来たのモデル・広岡浅子は乳がんにかかってキリスト教入信へ/刺される事件は創作
広岡浅子に待ち受けている最大の困難というと、乳がん手術です。その直前には最愛の夫、信五郎がこの世を去っていますからこの時期は広岡浅子(白岡あさ)にとっても非常に難しい時期でした。
ちなみに、おそらくですけど朝ドラの中では白岡あさがとある男に刃物で刺されるという事件が出てくるはず。原作の土佐堀川では、銀行に借り入れを申し入れてきて断られた一人の男の逆恨みから、広岡浅子が刺されるという事件が起きます。命からがら生き延びたのをきっかけに、生命保険事業を本格化させていくというストーリーだったのでした。
しかし、この話は史実にはないオリジナル。広岡浅子に関して調べても殺傷事件のことは一切出てきませんから、おそらく原案になっている小説での創作。「九転十起」の生涯を演出する狙いがあったのかもしれません。
広岡浅子(あさが来たの白岡あさ)が乳がん手術に挑んだのは60歳の時
既に夫の信五郎は1904年に亡くなっており、浅子は娘のお婿さんである広岡恵三氏に全事業を譲って、事実上実業界からは既に引退していました。
手術そのものはそれほど困難なものではないと言われていたものの、浅子は既に老齢であったこともあり、存命の内に整理できることはすべて整理したと言います。手術が無事に終わった彼女はこの経験をきっかけにキリスト教へ入信し、女子教育にもさらに熱が入るようになっていきました。
女子教育普及のために静岡県御殿場で開かれるようになった夏の勉強合宿には、花子とアンで朝ドラのヒロインのモデルになった村上花子も後に参加しています。もともと女性地位向上や権利上の自由と平等を理念に共感していた彼女とキリスト教の相性というのは非常に良かったのでしょうかね。
大坂協会の宮川経輝という牧師のもとで講義を受け、クリスマスには先例も受けている。晴れてクリスチャンとなった浅子は布教活動と共にキリスト教関係の人物の事業資金の提供も惜しみませんでした。当時の様子を広岡浅子の著書、「一週一信」で語られています。少し難しい表現が混じっていますが、臨場感を出すために原文のまま引用してみましょう。
更生の思ひのあつたその夜より、私は病に犯され、発熱劇しく、続いて腎臓炎に罹り、少しの身動きも出来なくなりました。そして病床に在る事数か月の長きに亘り、暫しは医師にも危ぶまるゝ重患に陥りましたが自らは殆ど苦痛を覚えず、これぞ「古き我」で十字架に釘け、基督によって「新生」を得る機会であると、日々敬慕せる牧師の説教集や偉人ブース大将の伝など楽しく味ひ祈りの妙境に入りて、神の恩寵を味ふ中に快癒に向ひました。
広岡浅子の乳がんについては、原案となった小説の土佐堀川では確か「紫色に変色してこぶし大ほどに腫れ上がった」というような表現があったはず。当初は本人は気にしていなかったものを、娘の亀子が見て仰天して、夫の知人を経由して医師を紹介し、そこで手術したという流れだったと思います(ちょっとウル覚え)。
既に60歳、しかも医療が充実していた現代とは違うご時世でしたから、難しい出術ではないと言われていても、やはり自分の死は相当に意識したのでしょう。それがキリスト教への関心をより強くさせたようですね。