花山伊佐次のモデル花森安治・暮しの手帖の商品テスト全貌/とと姉ちゃん

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NHKの朝ドラ、とと姉ちゃんに登場する花山伊佐次(唐沢寿明)は暮しの手帖社の名物編集者として活躍した天才、花森安治です。おかっぱ頭でスカートをはき、男なのか女のかよく分からない異質な雰囲気を醸し出す、学生時代のあだ名は鬼瓦、そんな編集者です。

とと姉ちゃんで花森安治(ドラマ内・花山伊佐治次・唐沢寿明演)が登場するのは後半から。すくなくとも前半第13週までには登場しませんが、後半はとてつもない存在感を発揮してくると思います!

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花森安治が暮しの手帖で実践した商品テストは妥協なき企画

大橋鎭子と花森安治 戦後日本の「くらし」を創ったふたり (中経の文庫)

暮しの手帖の名物企画が商品テストです。昭和29年に始まった商品テストは社会現象にまでなり、この企画で良しとした商品は売れに売れ、ダメの烙印を押された商品は全く売れません。あまりの反響の大きさに、「商売の邪魔をするな」との苦情が届いたり、「掲載してもらうにはどれぐらいのお金が必要か?」との広告代理店からの問い合わせもやまなかったといいます。

なにせ商品テストの企画は広告を一切載せない独自の編集方針。広告料をもらうと「紐つき」といって、スポンサーの圧力を受けざるを得ませんし、機嫌を損なうことは書きにくくなります。何せ広告料がないのだから、売上は雑誌の部数次第。商品その他は全て自腹で購入です。

花森安治本人はこの件について、編集者として表紙から裏表紙まで全て自分で握っていたい。広告は土足で上がり込んでくるようなものだとし、さらにスポンサーの圧力がかかるため、商品テストの意味が無いと述べています。

考えるのは簡単、やるのは難しい、アタリマエのことを当たり前にしてしまうのが天才・花森安治です。

商品テスト以外にも、花森安治の哲学はすさまじい

「作っている人たちが命がけで作っているものを評価するのだから、こちらも全力でやるんだ」というのが商品テストの根底にある思い。さらに、企画会議では常に価格分の価値があるかどうかを編集者に問い続けたといいます。なかでも非常に印象的だったのが、次の部分。

また、編集会議の席上で、花森はときどき、大きな声を出すときがありました。それはたいてい、編集プランがなにか丁重のときでした。

「読者の人たちが、本屋さんの店先で、落とさないように、すられないようにとポケットやふところ、ハンドバッグの中に大切にしまってある財布をとり出し、その中から三百二十円を出して暮しの手帖を買って行ってくださる。これは、大変なことだということを、君たちは考えたことがあるか。

一ヶ月働いた大切なお金を入れた財布をとり出して、その口金をあけさせるだけの値打ちのあるプランが出せなくて、なにごとだ」

【ポケット版】「暮しの手帖」とわたし (NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』モチーフ 大橋鎭子の本)」P136より引用

これぞ職人というか、妥協のない仕事というのはこういう事をなおざりにせず、当たり前のことを当たり前にする、しかもずっとずっと継続していくのが彼の強さなんでしょうね。商売をやっている人間は皆、こういう考えを肝に銘じて置かなければと思います…。

暮しの手帖で実際に行われた商品テスト

で、こういう哲学のもとでどんな商品テストをしてきたのか。第一回は小中学生用のソックス22種。他にもマッチ、えんぴつ、アイロン、しょうゆ、電球、トースター、洗濯機、石油ストーブなど、当時の人々が快適な暮らしのためにほしいと思っていた商品ばかりです。ただ、車は購入費が高額なことが理由でテストはしないとのこと。

トースターの商品テストでは、食パンを焼きに焼きまくってテスト。その数なんと、43,088枚!!写真がこちら。

積み上げられた食パンとベビーカーの商品テストをする様子

「花森安治伝」(新潮社・津野梅太郎著)P255より

す、すごい・・・。

ベビーカーのテストのときは、女性社員総出で砂利道を一人ひとり100キロを走行。ミシンのテストはそれぞれ1万メートルを縫い付ける。1万メートルって10キロです…。

さらに、エアコンや洗濯機などの電化製品を設置するときは、その会社の一番の技術者を呼びつけ、研究室に自ら付けさせるという徹底ぶり。しかも偶然その商品が不良ということも考慮し、二つ用意させる。

さらに、電気コードやその他の商品は人によって使い方がバラバラです。電気プラグを抜くとき、根本から丁寧に抜く人もいれば、引っ張るように抜く人もいるし、横から抜き差しする人もいる。ありとあらゆるパターンを考慮して、全く同じ回数、人の手で実際に抜き差しするという、テスターからすれば地獄のようなテストをガチでやっていたそうです。

ここまでくると、スゴイというか、もう引きますね(笑)

花森安治伝説、火事のテストで家一件を全焼させる

石油ストーブの企画を実践した時、国産製品とイギリス製品をテストしました。一定温度になるまでの時間、灯油の消費量、におい、掃除のしやすさしにくさ、持ち運び」を徹底テスト。その結果、イギリス製品が国産を圧倒しました。

石油ストーブの火事をテストする様子

「花森安治伝」(新潮社・津野梅太郎著)P247より

それだけにとどまらず、なんと花森安治は安全性のテストのため、「燃えているストーブが倒れたら、どうなるか試してみろ」と命じます。国産製品は火柱が上がって消火したが、イギリス製品は何事も無く、1分そのままにしても火は燃え移らず。元に戻すと何事も無く、ストーブは燃え続けたそう。

この記事をきっかけにイギリス製の石油ストーブはバカ売れし、百貨店では在庫がなくなり、予約販売でないと手に入らないという社会現象に発展しました。

石油ストーブの消火方法をめぐって消防庁と意見が対立

花森安治は以前、自宅が全焼する火事に見舞われています。その経験と、商品テストの経過もあってか、石油ストーブからでた火はバケツの水で消せるという持論がありました。しかし、消防庁はまず毛布をかけて消火すべし、との発表をしており、マスコミを巻き込んで両者は真っ向から対立。

火が出てから消防車が到着するまで約10分。その間に費を消さなければ、その家はすぐに全焼してしまいます。しかもありとあらゆる想定からの実験をしていた花森安治と、家庭消防の遅れた研究とただの経験則による消防庁の対立は水掛け論そうと呼ばれたこの騒動。

第一回目の石油ストーブのテストから6年後、暮しの手帖は家一件を丸々焼くという大掛かりなテストを実行し、社会に衝撃を与えます。どっちの消火方法が正しいのか、各自治体、一般市民からの問い合わせが殺到してしまいます。困った消防庁は根負けする形で大ボナ公開実験を行い、事実上、花森安治側の意見を受け入れる形で収束しました。

おそるべし、花森安治。

どんな男気のある編集者かと思いますが、見た目はおかっぱの女装のような格好をする不思議な人です。以下の書籍には、花森安治の写真も多く掲載されていて、研究室や仕事風景、大原鎭子との写真の他、下腹ぽっこりのズボンを履いてお茶目な姿でダンスする写真や、真っ白な短パン半袖姿で野球をする花森安治の写真もあります(笑)

ちなみに、おばさんのような見た目でグローブを付けて野球をしている写真をみて、思わず吹いてしまったのはここだけの話。

花森安治関連だと、こっちの本も有名です。


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