杉森久英原作本・天皇の料理番の感想レビュー【TBSドラマ化】

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TBSで日曜夜10時から放送されるドラマ「天皇の料理」の原作を読みました。書店やAmazonではドラマ化に合わせて上下巻の文庫本が発売されているようですが、私が今回読んだのは図書館で借りてきた40年以上前の古い原作です。新しい方と古い方で内容に相違はおそらくないと思いますが、TBSの公式サイトを見ると、ドラマでは多少アレンジが加わっているようです。

天皇の料理番の物語そのものは実在した秋山徳藏(原作内の秋沢篤蔵)という方をモデルにしていますが、細かいエピソードや設定は架空のものが多いです。どこでどれだけの期間修行して、どんなお役目を果たしてきたか?といった基本路線は実話に基づき、それ以外は作者が作り上げたフィクションのようです。

 

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天皇の料理番・原作本を読破しての感想

まず本を手に取った時に中身をパラパラっとめくったのですが、さすがに分量が多い。私が読んだのは上の画像よりも、もう一つ古いものでした。

天皇の料理番の本の中身

かなり分厚い本だったので読みごたえがあるなぁと思っていたら、本を開いてみるとご覧のとおり小さ~い文字の2段で書かれていましたから、これは読むのに時間がかかるかなぁと。しかし、ざ読み始めると驚くほど読みやすく、二日ほどで一気に読み終えてしまいました。

本の内容としては、明治~大正~昭和という激動の時代に福井の田舎に生まれた次男坊がカツレツに出会ったことを契機に西洋料理の世界へ飛び込み、単身上京。下っ端の皿洗いから徐々に頭角を現し、フランス修行を経て宮中の料理番として出世していくという人生をつづった物語です。

 

篤蔵という真っ直ぐで純粋な一面と人間味あふれる一面が魅力的

まず篤蔵という男の真っ直ぐさ、純粋さ、ひたむきさに心を打たれない人はいないでしょう。当時も今も、職人の世界は尋常ならざるほど上下関係に厳しく、理不尽であろうが何であろうが上の立場の言うことは絶対です。どれだけ力があってもまずは下っ端から、1日でも早く厨房に入った人間は先輩という世界で、主人公はひたむきに成長していきます。

原作小説の中でかなり強調されていましたが、明治・大正時代のコックや料理人という職業はいわば職人です。学識があったり、人格が求められるというよりは、気性が荒く扱いにくい頑固な人がおおくいる世界でした。日本で見習いとして働いているときも、フランスに修行に行った時も、いわれのないいじめや嫌がらせに何度逢おうが真正面から立ち向かいっていく姿に一種のあこがれと尊敬すら抱きました。

料理への真っ直ぐな情熱と純真さの一方で数多くの失敗、時に見せる邪悪な一面がより主人公の人間味を強調させていました。ドラマでは佐藤健さんが主人公を演じるということで、演技評価が抜群に高い彼なら魅力的な篤蔵を魅せてくれると思います。

 

物語の前半~半ばが見どころで、後半はダイジェストに近い

人それぞれいろんな感想があるかと思いますが、個人的には宮中で働き始める前までが見どころのように感じました。それまでの修業時代の方が読みごたえがあってテンポもよく、一つ一つの出来事も丹念に描かれています。

一方、最後の方の宮中に入ってからは一気に時間の流れが加速しますので、主人公にとって大事な部分を選びぬいて描くというダイジェスト的な描き方でしたから、読み応えという観点では修業時代の方があったかな、という印象です(あくまで個人の感想ですが)。

後半に行けばいくほど実話のエピソードが豊富に引っ張られている感じがしました。まぁ後半に行くにしたがって物語も山場が作りにくくなっていましたし、個人的な読み疲れも出てきていたとは思います。ドラマでは後半に山場があったほうが絶対にいいでしょうから、演出がどうなるか楽しみ。

 

幕末~明治・大正の日本の変化をみるのは興味深い

あともう一点非常に興味深かったのが、時代背景を上手にとらえて描写されていたことです。徳川幕府の時代から明治維新を経て西洋文化が日本に入り込み、技術の発展と近代化を図る中で庶民がどのように暮らしていたのかを見るだけでも非常に興味深い。

自動車が世の中に登場し始めたころのことや、カツレツ、ビフテキ、ライスカレーなど今では死語になりつつある料理名が新鮮です。また西洋料理を当時の日本人がどのように楽しんでいたのか、四つ足の獣肉を食べなかった日本人のこと。

幕末~明治期の政治家の名前も多く出てきますし、東京の地名も多く出てきます。いろいろな地名が出てきて、今立っている建物と当時の様子も詳しく書かれていますから、東京にお住まいの方は興味深く読めるのではないでしょうか。


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