限界集落株式会社(NHKドラマ)あらすじ&原作小説読了の感想

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NHKでドラマ化される「限界集落株式会社」の文庫本の原作小説を読了しました。思っていた以上に読み応えが合って、なかなかボリュームがありました。関東地方にある農家を中心とした限界集落に一人の経営コンサルタントが現れ、その地域を経済的にも社会的にも再興させていく物語です。テーマ自体が現代の日本の社会問題ですし、なかなか面白い着眼点でテーマ設定だなと思って手に取りましたが、物語の中身もかなり本格的でした。

 

限界集落株式会社(NHKドラマ)のあらすじと感想レビュー

限界集落株式会社 (小学館文庫)

結末部分は正直、人によって意見(賛否)が別れるところだと思います。起承転結の転で終わり、エピローグで結が軽く触れられる程度。個人的に「えっ、これで終わり?」というちょっと拍子抜けした感じはあるものの、此の物語はそこが重要ではないのかなとも感じます。全体的に、ストーリー物の基本である「背景設定→主人公の壮大な目標→仲間の集結といざこざ→軌道に乗る→主人公に困難がやってくる→それを乗り越えハッピーエンド!」という流れです。その中に恋愛要素も若干含めながら、救世主現れたり、敵だった人が味方になったり、というオーソドックスな感じでした。

物語の中身では、多岐川優(谷原章介)がこの村の再興を目指し、現代的な経営手法を取り入れた民間の農業組織をつくり上げることを計画。放棄農地を一括で管理し、収益を独自基準で分配する計画で、コスト削減と農協に依存しない販路の開拓、そしてきちんと収益を上げるための経営計画をもった法人組織を目指すというもの。その土地で代々百姓をしてきた現場の正登とその娘、美穂がメインの役柄。

 

原作とドラマの違い

原作小説では多岐川優(谷原章介)、大内正登(反町隆史)、大内美穂(松岡茉優)の3人がメイン。代わり代わりにそれぞれの立場から物語が描かれているのですが、ドラマではおそらく反町隆史さんが演じる大内正登が主人公です。さらに、正登の過去は、以前有機農業に挑戦するも失敗し、借金を背負うという設定ですが、これはドラマ特有のもの。原作ではやんちゃで暴れん坊だった彼は都会で会社員をしていたが、退職し、転職先もすぐに倒産して故郷に戻るという設定でした。

ドラマが放送前の段階でこの記事を書いているので、おそらくドラマの中でもまた原作とは違った設定が登場するものだと思います。あくまでここで書き示しているのは「原作のあらすじ」なので、多少の相違点は出てくるかもしれません。

 

起承転結の「起」の部分

※便宜上、ものがたりのあらすじは起承転結で4分割します。小説に起承転結?と感じますが、4分割した方が伝わりやすいとおもうので、あえてこの表現を使います。

起承転結の起の部分はあかね(井上和香)、三樹夫、千秋が都会からやってきた農業研修生を正登が受け入れるところで、多岐川優は東京の仕事を退職してバカンス気分で父方の亡き祖父の故郷へやってくる。最初は都会的な考えを持つ人間と田舎で生まれ育った人間の考え方の相違やバトルがあり、この辺りはなかなかリアル。

限界集落の現状を目の当たりにした優は、自身の持つ経営コンサルタントとしての手腕を活かし、この集落に民間の営農組織を立ち上げることを決意。此の村のリーダー的な立場にあった大内正登とその娘、美穂の協力で現場知識のない優を支えていく。それぞれに与えられた役割は以下の様なもので、組織はスタートする。

  • 優:経営計画
  • 美穂:現場監督
  • 正登&あかね(研修生・井上和香):営業
  • 谷村三樹夫(研修生):ネット通販
  • 梅田千秋(研修生):イメージキャラクター創作

外部からやってきた人間に好き勝手やられてたまるか!損得や経営上の考えとは全く違う、代々ご先祖が守ってきた土地の活用という問題に直面しながらも、経営的思考と情緒的思考の間で揺れる人間模様が描かれます。

 

起承転結の承

営農組織を立ち上げ、販路拡大や農地の有効活用、ネット通販など各試みが軌道に乗るまでがこの部分。様々な苦労と一筋縄ではいかない現実の厳しさに直面しながらも、なんとか軌道に乗り始める営農組織。この頃、獣害に田畑を荒らされる問題が置きたり、以前はこの村を切り捨てようとしていた役場との対立がよりいっそう浮き彫りになり、その都度その都度で次の一手が求められる。

ただ、此の頃は組織が取る手法がトントン拍子で上手く行き、販路も東京に拡大し、イメージキャラクターの知名度は秋葉原やオタク界隈でも広がり、書籍化やゲーム化といった今日的な飛躍を遂げる。その人気の高さに目をつけたのが役場の人間たち。以前は止村の動向にいちいち反対の立場を取ってきた彼らが、態度を一転。金銭面や他の協力を惜しまずに行うことで影響力を増大させ、実権を握ろうという関わり方をしてきた。

多岐川優は東京時代の知り合いとタッグを組み、組織をついに株式会社化させた。そして、イメージキャラクターの人気を最大限利用しつつ、村のなかに大きな箱物を作りテーマパーク化させるという、壮大な計画を進行させた。社交性があり類まれな行動力を持つあかねが次々客先を獲得し、ついにはテレビ取材まで引っさげてくるほど、営農会社は順調だった。しかし、その一方で彼は美穂との関係、そして自分の将来について悩み苦しんでいた。

 

起承転結の転

順調に成長を遂げてきていた営農組織が一転、度重なる困難に立ち向かっていくのがこの部分。困難の一つ目はあかねと正登による暴行事件。もう一つは、その暴行事件によって地に堕ちた営農組織の評判が経営を直撃し、借入金の返済が困難に陥るというもの。

 

正登の過去

正登が過去に警察のお世話になっていた過去がここで描かれる(ドラマではどう描かれるかは不明ですが・・・。)会社員時代、地味な女性の部下と親密になった。その女性は夜のお店で普段とは全く別の顔を持っていたが、二人の仲が親密になった時、突然退職。そして、会社の中の金庫から現金が盗まれていたことも発覚した。四方八方を探し回り、ついにその居場所を突き止めて乗り込んだ正登だったが、その場にいた男性と揉み合いにあり、暴行容疑で送検された。

 

正登とあかねの暴行事件

夜も深まり辺りが暗くなった時間帯、あかねが見知らぬ男に攫われかけていた。あかねには内縁の夫がおり、ヤクザがらみのどうしようもない夫だった。愛想を尽かして止村にやってきたあかねだったが、その際に300万ほどの金を盗んで出てきたらしい。慰謝料換算すれば安い金額というのは本人談だったが、テレビ出演などで全国に顔を晒したことで夫に見つかり、この事件に結びついてしまった。

暴行を受けた正登は気を失い、あかねが石で男の後頭部を殴り警察が直行。男も正登も命に別状はなかったが、過剰防衛の暴行と窃盗の容疑をかけられたあかねは抑留されてしまった。止村の評判は地に落ち、週刊誌やネット上では格好のネタにされるという始末。あかねはこつ然と姿を消し、代表の立場にある多岐川優と大内美穂の営農法人の出資者たちへの謝罪周りが始まり、陳謝を重ねながらも状況が悪いまま。止村の未来に暗雲が立ち込めていく。

 

借入金返済問題

暴行事件によって経営的に大打撃を受けた営農組織は、借入金の返済が困難に陥る。その額2億4千万。多岐川優本人が自宅や株といった個人資産を売却し、返済に当てるが、それでもまだ4,000万ほど足りない。村の人々が協力し合い、さらにこの止村に縁が深い人々に協力を仰ぐがなかなか上手くいかない。

以前対立していた役場とタッグを組み、ロードレースのイベントを開催など打てる手は全て打っていくが、最終的に救ったのは見知らぬ女性からの1000万円もの振込だった。その女性は東京歌舞伎町から振込をしていたことが分かり、正登はすぐに東京へ行く。一軒一軒しらみ潰しに当たり、地道に人探しを実行。ついに、姿を消していたあかねを見つけた。

 

起承転結の結

あかねが正登に、優が美穂に、美穂も優に惹かれていた。結局最後は美穂と優が皆の祝福を受けて結婚。そして娘の結婚を見届けた父の正登と止村に戻ってきたあかねはじきに結婚するだろう。借入金返済問題も無事に乗り切り、村にはまたたくさんの都会の若い人が研修生としてこの村にやってきた。

この村にはまだ見ぬ明るい未来が待っている。限界集落だったこの村には、計り知れない可能性がある。そんなことを匂わせながら、物語は終わっていく。

 

脱・限界集落株式会社という続編もあり

ドラマでは続編まで描かないと思いますが、小説では4年後を描いた続編があります。「脱・限界集落株式会社」というもので、幕悦町の駅前商店街を舞台にした地域活性化を描いた物語。登場人物はそのままですが、主人公はおそらく美穂。こちらも、ドラマの影響で売れ行きは好調になりそうです。

 

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