NHK朝の連続テレビ小説の原作にあたる、「土佐堀川・広岡浅子の生涯」を読みました。幕末~明治・大正期に渡って活躍した女性実業家で、政治体制と共に日本経済にとっても激動の時代を生き抜き、女性の地位向上や女性教育にも尽力した方です。
幾多の苦難を乗り越え、財を成し、己の為ではなく社会の為に事業を興してきた女性です。七転び八起きならぬ「九転十起」を哲学とした女性の姿は、きっと朝から並々ならぬ元気を貰えるはず!
目次
NHK朝ドラ「あさが来た」の原作小説の内容とあらすじ
小説の感想を一言でいうなら、パワフル。それ以外に言葉が見つからないぐらい、パワフルな女性です。豪傑というか、怖いもの知らずというか、気が強く、確固たる自分と信念を持った女性の生き様です。
ヒロインは広岡浅子という女性ですが、彼女が残した主な功績は以下のような内容です。
- 明治維新を乗り切るための加島屋の存続
- 九州の鉱山開発
- 加島銀行創立
- 日本女子大学校の創立に尽力
- 大同生命の創立
もちろん、これだけでなく他にも細かい活躍は山のようにあります。その過程では政財界の大物(伊藤博文、大隈重信、板垣退助、渋沢栄一などなど)との関わり、商いに関する哲学や女性教育への貢献、見どころがたくさんありました。
幕末~明治維新
もともとは京都の三井家の生まれで、大坂の両替商である加島屋に広岡浅子は嫁ぎました。そこで迎えた明治維新により加島屋は存続の危機に。全国の諸大名に貸し付けていましたが、維新によって大名そのものがなくなりました。大坂の同業者は続々と倒産していき、資金難に陥った加島屋を存続させるべく、浅子は金策に奔走します。
東京、毛利家から借用していたお金の返済期限を延期させてもらう交渉に出ますが、難航。ここが最初の山場。
九州の鉱山で石炭事業
新政府の目指す方向性に合わせた新しい商いが必要と判断した広岡浅子は石炭事業に目をつけます。なけなしの金を集めて九州の山を買収し、鉱山事業に参入。男だらけの危険な事業を女性が経営するという当時では考えられない社会背景の中、荒れ狂う坑夫たちとを見事説き伏せる。
護身用のピストルを忍ばせていた有名な逸話もここで登場します。
しかし、事業が軌道に乗り始めた最中に爆発事故が起こり、多数の犠牲者を出してしまいます。遺族への多額の賠償金など大きいダメージを負いながら、広岡浅子は銀行事業への参入を画策していきます。
ちなみに、このあたりで広岡浅子の子供、一人娘の亀子が誕生します。爆発事故のときは亀子が肺炎で生命の危機にありながら、浅子は九州へと旅立ちます。
加島銀行創立
当時の予定からは遅れたものの、銀行業に参入し加島銀行を設立。当時としては画期的とも言える、女性行員を採用する。彼女たちの教育には自ら率先してあたり、基礎学問やその他銀行業務に結び付く実学などを講義して、自らの知識と経験を惜しみなく教え込んだ。
女性行員がまた評判を呼び、支店の華となり、預金高は順調に増えていく。
成瀬仁蔵との出会いと日本女子大学校設立
広岡浅子の元に訪れた小汚い男、成瀬仁蔵は日本の女子教育の必要性を説き、日本初の女子大学校設立の協力を要請する。志と理念に共感した浅子は惜しみない協力を約束し、資金調達に乗り出す。
政財界の大物を説きふせ、まずは影響力のある大物から協力を得るべしとの考えの元、行動に移す。その相手は時の総理大臣閣下、伊藤博文。
その他渋沢栄一、板垣退助、大隈重信など歴史の教科書にも出てくるような超大物からの資金協力と寄付金を集めていく。校舎を東京にするか、大坂にするかなど懸念事項も多く、資金調達も何度も暗礁に乗り上げそうになりながら、最終的には明治34年4月に開学。
日本初の日本女子大学校、現日本女子大学が創立される。
難波銀行破綻で加島銀行存亡の危機
大坂の難波銀行が経営難に陥り、預金支払いが停止したことで、加島銀行の顧客に不安が広がり、客が殺到。預金をすべて引き出されては現金が手元になくなり、共倒れの危機に陥る。その後預金高を倍増させる狙いで、ここは一度全て客の予防通りに預金を支払うも計画は失敗。
一気に資金難に陥るが、政府の救済融資などにより窮地を脱する。さらに地道な取り組みが功を奏し、預金高は伸びを見せ始めた。
広岡浅子傷害事件と大同生命誕生
両替商時代の同業者で目の敵だった万屋(よろずや)から資金提供を申し込まれるが、拒絶。何度も顔を出す万屋を追い返すが、これが恨みを買い殺傷事件を起こされる。腹部を刃物で刺された浅子は九死に一生をえる。
もともと加島屋では朝日生命という生命保険事業を行っていたが、さらなる拡大を目指すことを決意。同業者が乱立していた業界で、合計3社による合併を成功させ、大同生命が誕生する。
乳がんとの戦い、女性教育と最期
胸にあるしこりが肥大化し乳がん摘出手術を受ける。その後は娘婿に経営を一任して一線を退くも、女性教育に尽力しながら余生を過ごす。余生とは名ばかりで、結局は執筆活動や教育支援などで忙しく過ごす浅子を周囲は健康状態を心配する。
大同生命が隆盛を極め、加島屋最盛期を迎える。大阪に大同生命の豪華絢爛な本社ビルを3年がかりで建設し、喜びの中で病に伏せる。
大正8年、71歳で死去。
朝ドラ・あさが来たのあらすじとは微妙に違う?
朝ドラの原作ではありますが、あらすじや詳細なストーリーはまた別のノベライズ本として発売されています。あくまで原案といいますか、登場人物の名前も変更が加えられていますし、原作にあたる近作品がそのまま朝ドラのストーリーになっている訳ではありません。
おおまかなあらすじは上記のような展開だと思いますが、細かいエピソードはたくさんあって、非常に読みごたえありの作品でした。
また、小説は時代背景があるため、貨幣制度や商習慣、当時の日本経済に関する解説なども詳細に加えられていて、朝ドラの原作とはいえ割と小難しい箇所も多かったです。
歴史好きは日本経済の移り変わりが面白い
小難しい表現や用語が多いのですが、幕末~明治維新という時代背景の変化の中で貨幣制度がどのように変化し、商人たちが当時どのような環境下で商いを強いられていたのかも興味深い。朝ドラでこんな難しいこと解説するのかな?ってぐらい、結構本格的な内容でした。
NHKの朝ドラではこの辺りもことを詳しくやるかはわかりませんが、五代友厚など政財界の大物はそのままの名前で登場するようなので、彼らとのかかわりを見るのも面白そうです。
事業経営者や仕事に従事する方なら、きっと元気と勇気を貰える作品だと思います。