なぜ江戸に行くのか?教える者、学ぶ者の考え
それを聞いた寅次郎は意外なことを話し始めた。江戸に行って何がしたいのか?それはここで出来ないことなのか?何の志を持って君は江戸に行こうとしているのか?江戸や長崎に行けば何かが変わると誰もが信じて疑っていなかったが、寅次郎はそうではないと言う。
寅次郎の義理の弟である小田村伊之助のもとに相談を持ちかけた久坂玄瑞と高杉晋作だったが、彼も同じようなことを言う。「あれは嫌だ、これは許せぬと息巻いておるが、お前たちが何かをやったということは一度も聞いたことがない。やれるもんならやってみなさい。お前たちに出来るので、あればな」と半ば挑発じみたことまで口にし、2人は憮然とした表情でその場を去った。
伊之助は伊之助で、自ら講義を務める明倫館でも挑発じみたことを口走った。「近頃お前たちの学ぶ姿勢はなっとらん。いずれ私塾の人間に追いぬかれてゆくぞ」と言うと、それを聞いていた生徒たちは吉田松陰を思い浮かべ苦々しい表情になった。
明倫館の生徒と松下村塾の塾生
きっかけはささいなことだったが、大喧嘩になった。久坂、高杉、吉田稔麿、伊藤利助と3人の明倫館の生徒と殴り合い、取っ組み合いの大喧嘩に発展した。もちろん、稔麿の江戸行きは正式になくなった。
稔麿は懇願した。やはり江戸に行きたい。江戸で人々の生活を見、その人々がなにに喜びや悲しみを感じ、どういう生活ぶりで異国に対してどう思っているのか。書物の上の学問ではない、行きた人間を見たい!
あまりに鬼気迫る表情に圧倒される塾生だったが、満足そうな表情を寅次郎はあの言葉を口にする。平成の今なお、有名で色褪せない言葉。
「諸君、狂いたまえ!」
狂いに狂った塾生が起こした暴挙
この日は明倫館で藩主毛利敬親による視察が行われることになっていた。吉田松陰門下生の江戸行きを握りつぶした椋梨に直訴し、江戸行きの許しを請うていたところ、藩主の毛利敬親が通りかかった。
門下生は皆平伏しながらも、江戸遊学を鬼気迫る思いで直訴した。あの高杉晋作も、もはや狂っていた。吉田松陰による講義を受けた殿、そして門下生。皆、立場は違えど吉田松陰という人物の門下生である。直訴を受けた藩主敬親は、やっぱりいつものあの言葉で頷いた。
「そうせい」
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